NIMRA 2008年の研究会

  • 年次総会 (2008.1.23)
  • 2月例会:丸山 茂樹 氏「最近の外国人受け入れ状況の進展と展望」(2008.2.20)
  • 3月例会:阿竹 克人 氏「あたけぼね」が開く空間思考の世界(2008.3.26)
  • 4月例会:冨田 健嗣 氏「20年目を迎えた8020(はちまるにいまる)運動」(2008.4.23)
  • 5月例会:柴田 利実 氏「2007年2月京都迎賓館視察研修報告」(2008.5.28)
  • 6月例会:神谷 明彦 氏「東浦町におけるため池と里山を守るために」(2008.6.25)
  • 7月例会:水津 功 氏「LANDBANK −共有される風景」(2008.7.30)
  • 10月例会:坂野 幸典 氏「マンション大規模修繕について」(2008.10.22)
  • 11月例会:田井 能久 氏「清渓川(チョンゲチョン)から学ぶもの 〜堀川河川改修事業への提案〜 」(2008.11.19)
  • 12月例会:情報交換市(2008.12.3)
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    2008年総会

    日 時:1月23日 19:00〜21:00
    場 所:リビエール(栄)
    内 容:
     2007年決算、2008年役員人事、2008年事業計画について審議し承認を得た。
     会長:阿竹 克人

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    2008年2月例会

    日 時:2月20日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「最近の外国人受け入れ状況の進展と展望」
    講 師:丸山 茂樹 氏 (I.C.Nagoya 代表取締役、NIMRA会員)
    内 容:
     恒例になった2月例会の「外国人問題」は、10名余の例会参加者を得て、参加者も含めた活発な意見交換の中で行われた。時間の制約もあり、「愛知県における外国人問題」とりわけ学齢期に達した多数の日系人児童生徒の教育問題にまで踏み込めなかった点が残念で有った。
     参加者の中にはこれ以上の外国人の受け入れはすべきで無い、鎖国をした方が良い等、極端な意見も出されたが、現在の日本と日本人の置かれた立場、状況から考えれば一刻も早い愛知県民全体の議論と何らかの方向性が欲しいところである。ともすると、対岸の火事の様に見える身近な外国人問題が身近な足元まで来ている事を多少でも参加者が認識して頂けたと思う次第である。このテーマについては、時間が許せば、秋にこの続きを会員外も含めて意見交換を行いたいと考えている。
    (文責:SM)

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    2008年3月例会

    日 時:3月26日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「あたけぼね」が開く空間思考の世界
    講 師:阿竹 克人 氏 (建築家、(株)阿竹研究所 所長、NIMRA会員)
    内 容:
     立体幾何は中学校でも習うのだが、受験にあまり取り上げられないため、正多面体(すべてが同じ正多角形からできていて球に内接する多面体)が五種類しかないことは、大人でも知らない人が多い。正多面体は別名プラトン立体ともよばれ、西洋では歴史的に、四大元素説といっしょになって万物の根源と考えられた。正四面体が火、立方体が土、正八面体が空気、正二十面体が水にあたる。残された正十二面体はプラトン学派秘密の立体で、天空の形もしくは天空を満たすエーテルの形と考えられた。二種類以上の正多角形からなり、球に内接する立体は13種類あり、半正多面体やアルキメデス立体と呼ばれる。デューラーの版画などにも取り上げられるように西洋では多面体研究は貴族のたのしみであった。
     「あたけぼね」は阿竹が長年実用化に取り組んでいる展開構造のキットであり、これらの多面体はもちろん、多様な形態を束状に折りたためるが、それ以外にもベンデグリティ構造と呼んでいる多面体に対応した籠編み状の造形ができる。ベンデグリティとは阿竹の造語で、バックミンスターフラーのテンセグリティー(テンションインテグリティーを縮めた造語)の裏返しでベンディングインテグリティー、曲げ力集合体のような意味である。
     人間の網膜は二次元なので、立体幾何はむづかしいと思われがちだが、これらの道具をつかうことで経験的に空間思考能力が養われる。空間思考の基本はぼーっと考えることで、あらたなひらめきの世界にたどりつく事ができる。
     今回の例会は講師が会員外に積極的に声をかけた結果、立体幾何マニアが多数参加したために、一般向けの内容のはずが、高度用語の飛び交う会になってしまい、会員の中には面食らう方も出てしまったが、また違う世界に触れられたのではないかと思う。2000年会もいつもとは違うメンバーで盛り上がった。
    (文責:KA)

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    2008年4月例会

    日 時:4月23日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「20年目を迎えた8020(はちまるにいまる)運動」
    講 師:冨田 健嗣 氏(冨田歯科院長、愛知県歯科医師会 地域保健部員、NIMRA会員)
    内 容:
     はじめに、世界をリードしている高齢大国・日本の現状を踏まえてから、全国的な歯科保健運動である「8020運動」について紹介した。
     愛知県ならびに愛知県歯科医師会が「80歳になっても20本以上の歯を保とう!」というスローガンのもと、平成元年から全国に先駆けて取り組んできた8020運動が今年で20年目を迎えた。この運動は地道な啓発活動により広く周知され、一般の方にも理解されるようになった。
     8020運動の発祥地は愛知県であり、そのルーツは、実は入れ歯で噛める食品分類の研究であった。失った歯の本数が10本以上になると酢だこが噛める人の割合は60%以下になることが分かった。失った歯を10歯以下にしようとする「8010運動」が提唱されたが消極的なイメージのため、歯を残す・維持する意味で「8020運動」に名称変更した経緯があった。2005年の歯科疾患実態調査によると、80歳で20歯を達成した人は20%を超えるまでに至っている。
     愛知県歯科医師会におけるかかりつけ歯科医推薦による8020表彰事業において、平成18年度までに、表彰された80歳以上の高齢者は合計1万人を越えた。そこで、表彰後の20年後(推定100歳以上)及び5年後(推定85歳以上)の高齢者の健康状況を明らかにすることを目的として、平成19年に愛知県の委託事業として追跡調査を行った。調査対象者は平成元年度表彰者241名、13年度表彰者990名、14年度表彰者1,160名で、推薦歯科医師による対面聞き取り調査とした。
     元年度対象者で生存判明者5名のうち調査協力者は男性2名のみでした。13年度、14年度対象者の回収数は1,112名(51.6%)でそのうち80歳表彰者329名を抽出した。5年後の生存率は男女ともに80%を超えた。特に、男性の85歳生存は、愛知県男性の平均寿命79歳を6歳も超える寿命でした。85歳では、男性は介護認定者を除く84%が、女性では76%が、介護を受けていない状態、すなわち自立・元気な状態と推察された。80歳表彰時、歯数は平均25.1本、85歳では平均23.7本でした。85歳で歯数は1.4本減少したが、なお20本以上維持できていることが明らかになった。大多数の方が硬い物等何でも不自由なく食べられる状態であり、咀嚼能力が5年後でも高く維持されていた。かかりつけの歯科医院を持ち、早めに処置を受け、また喫煙や間食をせず、趣味を持っている生活習慣の方が8520達成者像でした。8020表彰者追跡調査結果は、新聞などメディアに「歯の健康で長寿」と取り上げられ注目を集めた。
     例会参加者の歯の健康に関する意識は高く、ご自身の歯の本数や歯科医院数のコンビニ化状況など、多くの質問が寄せられた。
    (文責:KT)

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    2008年5月例会

    日 時:5月28日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設 本社 8階会議室(葵センタービル)
    テーマ:「2007年2月京都迎賓館視察研修報告」
    講 師:柴田 利実 氏(株式会社TAS建築設計事務所代表取締役、NIMRA会員)
    内 容:
     日本文化のふるさと京都(大多数の京都人は京都が日本の中心と思っている)は、良き伝統を受け継ぐと同時に、先進的な文化を受け入れ(大多数の京都人は京都タワーを好んでいる)、感性を磨き、常に時代の先端を歩みながら、優れた技能を今日まで受け継いできた。その技能の数々を現代の感性で表現した京都迎賓館。
    1.大工工事は8m持放しの落し掛け、長さ12m幅50pの無垢杉天井板、土庇には16mの北山丸太等がコンクリートとガラスで密閉・空調された室内で伸び縮みに耐える仕事がされている。
    2.左官工事は現場からでた聚楽土に他の土を足して「水あわせ」を現場で行い、上塗り・中塗り・荒壁土を作って各室に塗ってある。
    3.建具工事は幅が1.4mもある吉野杉の摺上障子が430枚、床下からの空調に反ること無く使われている。
    4.表具は空調の空気が襖に沿って上がることで反らないように初めてアルミを下地骨の框の内側にいれ込んである。
    5.畳は藺草の栽培からはじめ、「中継表」の技法で約250枚の京畳が敷かれてい。
    6.錺金物(かざりかなもの)は釘隠としている。鍍金された銅版に細かい三角形を1oに満たない間隔で連続して彫り、線を表す蹴彫や、魚々子(ななこ)打ちなどの伝統技法を駆使して模様が作られている。
    7.漆は12m1枚板の座卓、16.6mの框に30,40工程をかけて仕上げられた。
    8.截金(きりかね)は飛鳥時代に仏教と共に中国から、仏像の飾りとして伝わったもので、金箔などによる線状の装飾技法である。薄さ1万分の1oといわれる金箔や銀箔を炭火で焼きあわせ6枚の厚みを持たせた箔にし、長さ3m、幅1.4mの檜板に膠と布海苔で1本1本模様に貼りあげられている。
    9.竹工芸は竹穂垣、黒文字垣が庭にせんさいな表情を与えている。庭園内部の仕切や目隠しとして活用されている。
    10.作庭は3年先、10年先を想定、10年したら居着き、それからは「守り」をする。建物に勝っても負けてもあかん。合わなあかん。1200年の歴史・文化を頭に入れていろんな要素を現代風にまとめて「平成の名園」が生み出されている。
    11.石像工芸は震災にも倒れない灯籠、蒲鉾状のムクリをもつ御影石の沓脱ぎ石などが庭園の空間に風情を与えている。
    以上、11分野にわたる伝統技能が「しつらい」と「もてなし」の心とともに海外の賓客に「和のくつろぎ」を体感していただく場となっている。
     視察研修会の間は伝統技能の紹介に終始、建物概要には一切触れない珍しい会であった。{設計監理:日建設計 施工:大林・竹中・鹿島特定JV 延べ:15、623u 構造:RC造(一部SRC造、S造) 総工費:201億円}
     愛知県出身の中村昌生氏が建設懇談会委員や伝統技能活用検討委員会座長として設計、建設に深く参画し、東京の設計事務所と施工会社が造った殻に京都人が仕上げをほどこし、京都の建築に仕立て上げた。1200年の昔から他国の領袖による支配により京都は発展してきたが、一方京都庶民は他国の支配に耐えながらも京都の発展を喜び、したたかに伝統文化を堅持してきた。今回の京都迎賓館の建設にあたって、改めて京都人の心を見せつけられた気がした。
    (文責:TS)

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    2008年6月例会

    日 時:6月25日 19:00〜21:00
    場 所:大名古屋ビル ICNAGOYA教室
    テーマ:「東浦町におけるため池(厄松池、切池、飛山池)と里山を守るために」
    講 師:神谷 明彦 氏(東浦町町議会議員、(株)大生紡績 代表取締役)
    内 容:
     愛知県東浦町で都市環境問題に果敢に取り組んでいる無党派の町会議員、神谷明彦氏をお招きして、ため池と里山の保全を切り口とした東浦町でのまちづくり活動について、お話頂きました。
     東浦町は、知多半島の付根に位置し、現在、人口4万9472人。近隣町村との合併ではなく、人口増加により市への昇格を目指しています。そんな中で、地域にあった「里山」や「ため池」は、開発圧力にさらされて減少の一途を辿り、また、辛うじて残っていても荒れ放題になっています。
     神谷明彦氏は昭和34年に東浦町の生路地区に生まれ、昭和59年、東北大学大学院理学研究科で修士課程を修了後、研究員として大手写真フィルム会社に入社。平成元年に、父親が経営する会社に役員として入社するため帰郷。平成11年東浦町議会議員に初当選。初の議会質問で「町内に残る2箇所の里山保存」を強く訴えました。同年にホームページを立ち上げ、議会レポートという形で自らの熱い思いを掲載し始めました。現在既に36号の読み応えのある議会報告を掲載。また2005年1月からホームページ上に「つれづれログ」も立ち上げられ、なかなか好評です。
     ため池は、もともとは江戸時代に農業灌漑用に造られたが、現在ではその役目を終え、地域の都市化により市街地に取り込まれて残り、ごみの投棄、外来水生植物の繁茂、悪臭などの問題が発生していました。神谷氏を中心とするメンバーは、平成11年から生路地区のため池の清掃活動を開始し、また、町役場へも働きかけて、池底の浚渫と生活排水のバイパス化などの整備を行って来られました。それと伴に、ため池の活用アイデアを地域の子供達から募集するなど、市街地にある身近な水辺として、あるいは、魚採りや散歩などの憩いの場としてや洪水調節機能としてなど、ため池の役割を見直そうという活動を通じて、地域のコミュニケーション作りにも取り組んでいるとのことです。
    航空写真で見ると、ため池はどれも「緑色」に写っており、浮き草が繁茂している様子が判ります。)
     一方、東浦町には2箇所のまとまった大きさの里山があり、その保全活動にも取り組んで来られましたが、1箇所は宅地化が決定して既に更地化されてしまいました。もう1箇所は保安林指定のお蔭で保全されていますが、町役場は「自然環境学習の森」として、ビオトープ造成や学習施設の建設等の「整備」する意向であり、里山としての自然な姿を残せるのか、議論が必要とのことです。
     例会では、パワーポイントによって多くの写真や図表などを用いて報告して頂き、講演後の意見交換では活発な意見が飛びかい有意義な例会になりました。
    (文責:TN、MT)

    例会資料:『知多半島・東浦町におけるため池(厄松池、切池、飛山池)と里山を守るために』

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    2008年7月例会

    日 時:7月30日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設 本社 8階会議室(葵センタービル)
    テーマ:「LANDBANK −共有される風景」
    講 師:水津 功 氏(愛知県立芸術大学 美術学部 准教授)
    内 容:
    内容:
     今日の景観行政の現場には、様々な混乱が見られる。十分な調査が行われないまま年間5回程度しか開かれない委員会方式で景観の基本事項が決定されたり、景観資源の選定が現地を訪れる事無く写真判定のみで行われたり、議会で説明しやすい内容に偏ったり、経済的見返りが期待出来るという謳い文句で観光化に走ったり、その土地のささやかな特徴的事実を誇大妄想的にクローズアップして無理矢理キャラクター化したり、「水と緑と、、」といった空洞化したスローガンでお茶を濁したり、などなど。
     景観の問題は、一部の危機的状況を回避する場合以外、このような短期的に事業化可能であることを念頭に置いた方法では解決出来ない。
     行政にとって、開発者にとって、デザイナーにとって、そして何より市民にとって必要な、持続可能な景観構築の方法について考えてゆく。

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    2008年10月例会

    日 時:10月22日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設 本社 8階会議室(葵センタービル)
    テーマ:「マンション大規模修繕について」
    講 師:坂野 幸典 氏(マンション・ビル保全協同組合 理事長)
    内 容:
     平成19年度のマンション着工件数も、主として改正建築基準法の施行の影響で、5年ぶりの減少となったが、マンションストックは増え続けている。ほぼ12年周期で行われる大規模修繕は、名古屋地域では年間400棟ほどで、そのうち設計事務所が設計・監理するのは100〜150棟ほどである。
     維持補修比率(建設投資に対する維持修繕の割合)は、西洋の建設市場と比べると日本は半分以下であり、アメリカと比べても低調であるが、年々維持補修比率は増加している。
     大規模修繕の取り組み方は、C・M方式、P・M方式、設計監理方式がある。管理組合が直接建設会社に発注するC・M方式は、組合員が主体でよいのだが、当事者であって、第3者でないので、了解、合意がとりにくい側面がある。管理会社に任せるP・M方式は、一見、組合員にとって手間がかからないように思えるが、必ずしも、管理会社が住民の味方とはいえず、なかには、建設会社に丸投げして、高額な手数料を取っている管理会社もある。
     設計事務所に任せる設計監理方式は、管理組合が設計事務所を何社か選んで、指名、見積もり依頼をし、理事会、修繕委員会、総会のプレゼンテーションを経て、設計監理委託事務所を決める方式である。その場合、施工業者は、新聞広告にて募集、何社かに見積もり後、設計事務所が見積もりの査定協力をして決定される。東京、大阪では、すでに定着している方式である。名古屋地域でも、H16年くらいから、マンション居住者の意識も高まり、この方式が増えている。
     今後とも、設計事務所の修繕専業事務所の確立をめざして活動していくと同時に、自己のライフワークとして高齢となっても社会に貢献し、生きがいとして仕事を継続したい。
    (文責:YH)

    講師略歴
    知多郡南知多町出身、S46年名城大学建築科卒。
    中日設計入社、マンション、ホテル、病院等の設計及び監理に従事。
    コーポラティブマンション企画会社を経て、未来設計社に入社、
    分譲マンションの設計監理を主として従事。1000戸以上の設計監理を行う。
    坂野設計事務所設立。修繕工事の将来性を信じ、協同組合をH15年設立。
    現在に至る。

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    2008年11月例会

    日 時:11月19日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設 本社 8階会議室(葵センタービル)
    テーマ:「清渓川(チョンゲチョン)から学ぶもの 〜堀川河川改修事業への提案〜」
    講 師:田井 能久 氏(不動産鑑定士、不動産コンサルタント)
    内 容:
     昨年11月例会で「不動産ファンドがもたらしたもの」とのテーマで講演いただいた田井能久氏に再度お話し頂いた。田井氏は、2008年9月、ソウル市で開催された「PPC2008」(不動産鑑定士の国際会議)に出席された。今回は、その際に調査視察された「清渓川の復元事業」についてご報告頂いた。
     この事業は、ソウル市中心部を流れる清渓川を約5.9kmに亘って復元させる大プロジェクト。目的は、覆蓋道路地下空間の有害ガスによる空気悪化と清溪高架道路の老巧化による大規模事故の回避。工事内容は、高架道路の撤去、構造物の補強、上水道や遮集管渠の移設等など多岐に亘った。クリアーしなければならない課題も数多くあった。例えば、この高架道路には、市全体の30%を占めるバス路線が走っていた。路線体系の改編などで利用者を増加させ自家用車の台数を減少させることで対応したとのこと。また、覆蓋道路の周辺には約6,000棟の建物があったが、その半数は零細な卸小売業。当然立ち退き交渉は難航、行政代執行への反対活動もあった。この点については国情の違いがどのように作用したのか興味深いところ。事業期間は03年7月から05年9月までと、僅か2年3ヶ月。このような難易度の高い大プロジェクトを短期間に完了させたことは驚異的。現在では当初の目的も達成しソウルの新たな観光名所となっている。一方、下流部では深刻な水質汚染も発生しているとのこと。日本でも東京の日本橋における高速道路の撤去と川の復元が検討されている。また、名古屋市でも堀川の再生が大きな課題となっている。田井氏の提言としては「目的や効果を早く明示しすばやく事業展開することが必要」とのことであった。

     引き続き、当会会員の林清隆氏から「堀川再生」についての講演があった。
     再生の原則は「水をきれいにする」「両岸を遊歩道化する」「川幅を狭めない」とのこと。よって、下水道計画を見直さなければならない。名古屋市の下水は1908年に始まった。これには2種類ある。@合流式(汚水も雨水も一緒に流す。3分の2はこの方式。)A分流式(汚水と雨水は別に流す。汚水は汚水処理場に流し雨水は直接川に流す。) @では雨量が多いと汚水処理場で全量の対応ができず河川に汚水も流す。よって、合流式ではだめ。あるいは、処理したきれいな水は工業用水として売却しているが、堀川には一応処理済だが汚い水を流している。従って、長期戦略に立ち「完全分流式」を整備する。中期戦略としては、沿岸に汚泥処理専門の処理場を建設し、堀川の汚泥を処理場に逆流させて処理するなどの方策を採る必要がある。具体的な提言を聞かせて頂いた。

    (文責:NS)

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    2008年12月例会

    日 時:12月3日 19:00〜21:00
    場 所:大名古屋ビル IC NAGOYA教室
    内 容:情報交換市
     参加者全員から最近気になる話題について情報交換しました。

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